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<column-05>やりとげることの意味。
 こどもたちが「ものを作る」ということは、まだ見たことのないもの、あるいは見たことはあっても初めて作ってみるもの、あるいは、すでに作ったことがあるけれど、前とは違うものができるという意味で新しいものを作る、ということです。
 そして、作っていたものが完成することで、「自分ってこんなことができるんだ」という誇らしい気持ちや、「次はどんなことをしてみようか」という未来に対する期待の気持ちが生まれてくるのではないでしょうか。
 もちろん、できあがったものが最初に考えていたものと違ったり、期待通りではないこともあります。でも、できあがったものには満足できる部分と物足りない部分が混ざっていると思います。
 いずれにせよ、ものを作るという行為には「完全な終わり」がないのです。
 作ったものが完成することの重要さは、こどもたちにとって、「できあがること」によってものを作る過程の価値がより高まるからです。
 こどもたちのもの作りは、出来る限り最後までやりとげて欲しい(それは自分たちの中で「納得がいく区切り」ということかもしれません)と思います。

 

<column-04>成長のシグナル。
 幼稚園の小さなこどもは自由に想像した絵を描くのは得意で、逆になにかを観察しながら描くのはどちらかというと苦手です。
 ところが小学生になって何年か経つと、徐々に想像だけで絵を描くことが難しくなるようです。
 その代わり、目の前にあるものをよく見る観察力や、見たものを正確に表現する力が徐々に増してきます。
 想像の表現から観察した表現への移り変わりはある日突然起きるわけではなく、人それぞれに徐々に移っていくように思いますが、日々こどもたちを見ながら「この間まで描いていた絵と違うな」とか「何を描くか思いつかないみたいだな」と感じたら、それも成長のシグナルではないか、と私たちは考えています。

 

<column-03>描くこと・作ることは伝えること。
 「絵を描くこと/ものを作ること」は、計算が早くなるとか、英語ができるようになる、というような「実用性のある教育分野」ではありません。
 しかし、つくることはこどもの表現する力を発達させる活動、と考えると意味は違ってきます。
 言葉を理解して会話できるのと同じように、絵を描いたりものを作ることは自分の中にある「なにか(他人に見えないもの)」を「見えるように表現する」というおおきな(実用的な)能力です。
 また、表現は主に「自分で思いついたこと」をかたちにすることですから、そこには人間の発想する力・創造性の成長が含まれます。
 創造的であることは、大人にとっても有用な能力の一つです。
 そういう創造的な人間を育てるプロセスとして、ものつくりの教育がこどもの人間形成に役に立つ部分があると思います。

 

<column-02>そのときどきのこどもたち。
 こどもたちと週末の教室で過ごしながら気づくことは、「こどもたちはここで学校や家にいるときとは違う時間を過ごしているのだな」ということです。
 教室には三々五々と色々な年齢のこどもがやってきます。彼らは同じ学年の(幼稚園などで一緒だった)ともだちや、特別仲の良いともだちを除くと互いに名前をはっきり覚えていないようですが、絵を描いたり一緒に遊ぶとき、そんなことはたいして問題にならないようです。
 こどもたちはお互いの絵を比べっこしたりしませんが(私たちもそういう指導はしないようにします)それでも刺激しあったりしています。
 また、アトリエに来たときは何を描こうかアイディアが浮かんでなくてあまり乗り気でなくても、他のこどもたちが描いている雰囲気の中で自分の気分も盛り上がってくることもあります。
 教室のこどもたちと過ごしながら二十数年が過ぎましたが、昔も今も変わらないな、と思うのは、教室のこどもたちがもともと豊かな感性をもっているということ、そしてご家族に愛されて成長しており、だから名前も覚えていないともだちと一緒に仲良く遊べる心の柔らかさ、優しさをもっているのだな、ということです。
 幸せなことに、わたしたちの教室はいつも心のやさしいこどもたちに恵まれているのだと思います。

 

<column-01>こどもは大人に出来ないことができます。
 こどもたちの造形を間近で見ていると、どうしてこんな風に描けるんだろう、とか、この発想は一体どこから生まれるんだろうと真剣に感心することがしばしばあります。
 たとえば、ゆかり美術のこどもたちは絵を描くときに「下書き」をしません。
 絵の具で絵を描くときも、B3サイズ(電車の中吊り広告くらいの大きさです)の画用紙に向かって、直接絵の具をつけた筆を動かして絵を描いていきます。
 慣れないうちは紙の中に描きたいものが上手く収まらなかったりすることもありますが、小学校高学年のこどもたちともなると大人顔負けの丁寧な表現力で、下書きをしないので筆の線に勢いのある、いきいきとした表現を自然に仕上げてしまいます。
 また、大人があたりまえと思っている角度とは全く違う視点を見つけて表現しています。
 こどもの意外な表現、発想は突発的なものが多いので、大人のように意図してそうなったとは限りませんが、いずれにせよ頭の柔らかいこどもの感受性がなければできない離れ業、と言って良いと思います。
 実は、世界的に見ても、大人たちがこどもの絵画表現の面白さやすばらしさに気づいたのは、ほんの百年くらい前のことなのだそうです。

 

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